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ぎっくり腰を防ぐ雪はねと除雪のコツ
こんにちは、川瀬邦裕です。朝カーテンを開けたら一晩でしっかり積もっていて、「今日も雪かきか」とスコップを握る。そんなときに限って、作業の途中や終わってから腰にズキッと痛みが走ること、ありませんか。当院の急な腰の痛みのページでも、冬場の除雪と腰のトラブルは切っても切れないテーマとしてよくご相談をいただきます。
この記事では、雪はねや除雪で腰を壊さないために気をつけたい体の使い方と、道具の選び方、そして冷え対策まで含めて、雪国で暮らしながら腰を守るコツをまとめてお伝えします。今年こそは「雪かきぎっくり腰」を回避したい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。


名寄で生まれ育ち、自分も毎冬スコップを握りながら二十年以上ぎっくり腰の患者さんを診てきた経験から、雪国で実際に使える腰の守り方をお伝えしたいと思ってこの文章を書いています
まずは、どうして雪はねの作業でぎっくり腰や腰痛になりやすいのか、その背景から整理してみましょう。理由が分かれば、「どこを変えたらいいか」が見えやすくなります。実のところ、雪はねの動きには腰に負担が集中しやすい要素がいくつも重なっています。
一番の問題は、前かがみで重い雪を持ち上げることです。水分を含んだ雪は想像以上に重く、腰を曲げた姿勢で何度もすくって持ち上げると、腰の筋肉や靭帯に大きな負担がかかります。加えて、雪を横に投げるときに腰をひねる動作が入ると、前かがみ+ねじりという、ぎっくり腰になりやすい条件が揃ってしまいます。
さらに、冬はどうしても運動不足になりがちで、筋肉や関節の動きも固まりやすくなります。冷えた状態でいきなり全力で作業を始めると、準備運動なしでダッシュするようなもので、腰が悲鳴を上げやすくなってしまうのです。


もうひとつ見逃せないのが「冷え」です。雪の中での作業は、どうしても腰やお尻、足元が冷えやすくなります。冷えると筋肉や血管がギュッと縮み、柔軟性が落ちた状態で力を入れることになります。この状態で重い雪を扱うと、ちょっとした動きでも筋肉が傷つきやすくなり、腰の痛みにつながります。
特に、朝の気温が低い時間帯の雪かきは要注意です。体もまだ温まり切っていないなかで作業を始めると、腰だけでなく肩や首にも余計な負担がかかります。後ほど触れますが、作業中は腰のあたりにカイロを当てておくなど、冷え対策をしながら行うことも大切なポイントになります。
ここからは、実際の雪はねの動きの中で、腰を守るための具体的なポイントをお話しします。同じ時間作業をするにしても、体の使い方ひとつで、腰へのダメージは大きく変わってきます。まずはスコップをどう扱うかから見直してみましょう。
意識したいのは、「スコップを腰より高く上げない」ことです。雪を高く放り投げるような動きは、腕だけでなく肩から腰まで一体となって強い負担がかかります。特に、頭より上に近い高さまで持ち上げる動きは、腰を大きく反らしやすく、ぎっくり腰のきっかけになりがちです。
雪を捨てる場所が高いときでも、腕を上げすぎない範囲にとどめるか、そもそも足場や雪の山の作り方を工夫して、「腰より上に持ち上げなくても済む状態」を作れると理想的です。毎回の動きは小さな差でも、積み重ねると腰の疲労感がまったく違ってきます。
腰を守るうえでぜひ覚えておいてほしいのが、「腰をひねる動作をできるだけ減らす」ということです。スコップで雪をすくって、腰をひねりながら横に投げる動きは、背骨や腰の筋肉に強いねじれを生みます。これに前かがみ姿勢が加わると、腰まわりには相当な負担がかかります。
そこでおすすめなのは、雪を捨てる方向を固定してしまうのではなく、自分の立ち位置をときどき変えながら作業することです。同じ方向にばかり雪を投げ続けるのではなく、ある程度片側が終わったら反対側にも雪をはねる、少しずつ向きを変えていくなど、左右のバランスを取るイメージで進めてみてください。
腰を捻る動き自体を減らすには、足ごと雪の山の方向に向き直ることも大事です。雪をすくったあと、腰だけをひねるのではなく、足と骨盤も一緒に小さく動かして、「体全体で向きを変える」意識を持ってみてください。これだけでも、腰の一点にかかるねじれのストレスをだいぶ減らすことができます。
道具の選び方も、腰を守るうえで大きなポイントになります。狭い場所や細かい作業にはスコップが便利ですが、広い範囲を片付けるときにスコップだけで頑張るのは、どうしても腰への負担が大きくなります。そこでおすすめなのが、スノーダンプを上手に活用することです。
スノーダンプは、雪を「持ち上げる」のではなく「押して運ぶ」ことができる道具です。押す動きが中心になる分、腰を曲げて持ち上げて投げる動きが減り、負担を分散しやすくなります。特に駐車場や広い歩道など、一度に大量の雪を移動させたい場面では、大いに力を発揮してくれます。
使うときは、前かがみになりすぎないように注意しながら、足と体幹の力で「ゆっくり押し出す」イメージで動きます。腕だけで押そうとすると、やはり腰や背中に負担が集中してしまうので、足元を安定させて体全体で押すことを意識してみてください。スコップとスノーダンプを使い分けるだけでも、冬の終わりの腰の状態がかなり違ってくるはずです。


理想的なのは、細かい場所や角の部分だけスコップを使い、広い面積はスノーダンプでざっくり片付けるやり方です。家の前や車のまわりはスコップ、それ以外はダンプ、といったように、あらかじめ役割を分けておくと、作業中に無理をしなくて済みます。
スノーダンプを使うのに慣れていない方は、最初は少なめの雪から始めて、押しやすい量を探ってみてください。一度に詰め込みすぎると、せっかく腰に優しい道具でも結局つらくなってしまいます。「これなら楽に押せる」という量を見つけて、その範囲で使い続けることが、結果的に長く楽に作業できるコツになります。
先ほど触れたように、冷えは腰のトラブルを後押しする大きな要因です。そこでぜひ取り入れてほしいのが、雪かきのときに「腰にカイロを当てて作業する」ことです。腰のあたり、とくにズボンのベルトライン前後にカイロを貼ると、腰まわりの筋肉が冷えにくくなり、動き出しがずいぶん楽になります。
貼る位置としては、腰のど真ん中だけでなく、おへその少し下あたりや、骨盤の上のあたりもおすすめです。お腹側を温めると、内臓や全身の血流も良くなり、結果的に腰まわりの筋肉もゆるみやすくなります。貼るときは、直接肌ではなく、必ず肌着やシャツの上からにしてください。
もちろん、カイロだけでぎっくり腰を完全に防げるわけではありませんが、「冷えた状態でいきなり全力」という最悪のパターンを避けるうえでは非常に心強い味方になります。雪かきの準備として、スコップやダンプと同じくらい「カイロを用意する」ことも習慣にしてみてください。
ここまで、雪はねや除雪で腰を壊さないための体の使い方や道具の工夫、冷え対策についてお話ししてきました。最後に一番大事なことをお伝えするとしたら、「無理をしすぎないこと」です。雪国に住んでいると、「ここは自分がやらなきゃ」「このくらいの雪で弱音は吐けない」と思ってしまうことも多いですよね。
でも、ぎっくり腰で動けなくなってしまうと、その後の数日〜数週間、仕事や家事、趣味、家族との時間にも大きな影響が出てしまいます。そう考えると、「今日はここまでにして、残りは明日に回そう」「この部分は家族や業者に頼もう」と決めることは、決して甘えではありません。むしろ、自分と家族の生活を守るための賢い選択だと感じています。
雪はねのたびに腰に不安を感じている方ほど、「スコップを腰より上に挙げない」「腰を捻りすぎない」「同じ方向にばかり雪を投げない」「スノーダンプを上手に使う」「腰を冷やさない」といったポイントを、できるところから一つずつ試してみてください。その小さな積み重ねが、冬の終わりの腰の状態を大きく変えてくれます。
名寄で生まれ育ち、自分も雪と付き合い続けてきた者として、雪かきと腰の問題は本当に身近なテーマです。これまで、雪はねをきっかけにぎっくり腰になってしまった方をたくさん診てきましたが、その多くが「分かっていたけれど無理をしてしまった」「頼るのが苦手で一人で頑張りすぎた」と振り返っておられます。
もし今、雪かきのたびに腰が不安になっているなら、そして実際に痛みが出始めているなら、そのサインを見逃さないであげてほしいなと思います。痛みは、体からの大事なメッセージです。それを無視せず、「そろそろ自分の体もいたわってあげよう」と思えたときが、ケアを始める一番のタイミングです。
名寄で、除雪や雪はねによる腰の痛みに悩んでいる方は、どうか一人で我慢しすぎないでください。あなたの生活スタイルやこれまでの経緯を伺いながら、どこに負担がかかっているのかを一緒に確認し、無理のない体の使い方やケアの方法を考えていきます。冬のあいだだけでなく、その先の季節も腰を気にせず過ごせるように、一緒に整えていきましょう。

